第11章 誕生祝い to JUN
「ありがとう…智」
抱き締めたまま呟くと、智の耳が真っ赤になるのが見えた。
それでも智は逃げ出そうとはしなくて。
「気に入ってもらえた?」
腕の中から少し心配そうに問いかけてくる。
「もちろん!感動して泣きそうなくらいだよ」
「そんな?大袈裟だよ」
智は冗談だと思ったのかふふっとおかしそうに笑うけど、俺は本当に感動してしまっていて…気を抜いたら涙が零れそうだった。
位置的に智から顔が見えなくて良かった。
「いや、本気で。本当に嬉しい。ありがとな、智」
「こちらこそ。喜んでもらえて嬉しいよ。ありがとう、潤」
声が震えないように気をつけながらも感謝の言葉を重ねると、智の腕がそろそろと俺の背中に回った。
そのまま一瞬ぎゅっと力を込めて俺を抱き締め返すと、パッと体を離した。
向き合った智は耳だけじゃなくて顔も真っ赤で、すごく可愛かった。
「大切にするな」
ちゃんと目を見て言えば、赤い顔のまま本当に嬉しそうに笑ってくれて。
俺もすごく嬉しくなった。
「あの絵もさ、やっぱりニノは何描いてるか分かってた?」
駅まで送る途中、ふと気になったことを聞いてみると
「なんでニノ?ニノは見てないよ」
智はキョトンとした顔になった。
「あれは潤のためだけの絵だから…家で描いてたし、誰にも見せてない」
意外な答えに驚く。
「誰にも?」
「うん。まぁ、ニノは描いてることは知ってたけど…っていうか、誕生日に絵をプレゼントしたらってニノの提案だから」
「そうなんだ」
「でもニノにも見せてないよ」
智はなんでもないことみたいにあっさり言うけど、その言葉にじわじわ胸が熱くなる。
智が俺だけのために描いてくれた絵。
ニノにすら見せてない、俺だけのもの。
それは驚くほど俺を幸せな気持ちにしてくれた。
とりあえず、あとでニノにお礼を言わなくちゃなんて考えながら、緩む口元はなかなか元に戻らなかった。