第10章 夏休み4
「まだあるよ」
翔ちゃんは俺の戸惑いには気付かずにっこり笑うと、更にバッグから色々取り出して。
あっという間にお土産の山が出来た。
「口に合うのがあればいいんだけど」
「こんなにたくさん俺がもらっていいの?」
「全部カズのために選んだものだから」
なんだか申し訳ないような気持ちになるが、はにかむ翔ちゃんの言葉に胸があったかくなる。
“俺のため”
翔ちゃんが俺のこと考えて選んでくれたお土産たち。
ちょっと多すぎる気もするけど···
「ありがとう。もちろんお土産も嬉しいけど、俺のために選んでくれた気持ちがすっごくすっごく嬉しい」
素直にお礼を伝えたら、翔ちゃんも嬉しそうに笑った。
「喜んでもらえて良かった。ちょっと多すぎたかなって思ってたんだ」
あ、多すぎるって自覚はあったんだ。
「舞にやりすぎるなって釘さされてさ」
「舞ちゃんに?」
「写真もお土産も多すぎると引かれちゃうよって言われたんだ。だから写真とか厳選したのだけ送ってたんだよ」
「写真まだあるの?見たい!」
「本当?見る?」
「うん!」
翔ちゃんはいそいそとスマホを取り出すと、写真を見せてくれる。
送ってくれた写真やそれと似たような写真が多いけど、見たことない写真もたくさんあった。
「これはね···」
一緒に画面を見ながら、翔ちゃんが1枚ずつ説明してくれる。
触れ合う肩も、耳元で聞こえる優しい声も、全部が俺を幸せにしてくれた。
離れてたさみしさが全部埋まっていくみたい。
幸せを噛み締めながら、時間が経つのも忘れて2人で写真を見続けた。