第10章 夏休み4
ーOsideー
潤が来なくなって1週間。
1人きりの美術室に慣れてきたところだった。
だから腹が減って集中力が切れて。
振り向いたそこにニノがいてめちゃめちゃビビった。
「うぉっ!びっくりした···なんだ、ニノか」
「なんだってひどくない!?」
「ごめんごめん!1人なの?翔くんは?」
いつも一緒だったからつい聞いてしまったら
「家族旅行」
ニノはぶすっとふてくされた顔をした。
ああ、そっか。
だからここに来たのか。
「さみしくなっちゃった?」
頭をなでなでしてあげたら
「そんなんじゃないもん」
ぷぅっと膨れてそっぽを向いた。
「潤くんがいなくて智がさみしいんじゃないかと思っただけだもん」
「はいはい、ありがと」
分かりやすい強がりにクスクス笑いが溢れてしまう。
ニノは少し睨んできたけど、すぐ真顔になって
「先週会いに来なくてごめんね。俺、こんなにさみしいなんて思ってなかったから」
手をきゅっと握って謝ってくれる。
ニノの優しさが嬉しい。
「ふふ、俺は大丈夫だよ。そんなこと気にすんな」
本当は少しさみしかったけど言わない。
ニノに気を遣わせないための小さな強がり。
「だって毎日会ってたのに急に1人になったらさみしいでしょ」
それでもニノが真剣な目で見つめてくるから
「ニノはさみしいんだ?」
もう一度聞いてみたら今度は素直に頷いた。
「だって今まで翔ちゃんに1週間も会えなかったことないんだもん···まだ1日めなのにさ···」
ニノの声がどんどん小さくなっていく。
ついでに肩も下がっていく。
落ち込むニノは見たくない。
笑ってるニノが好きなんだよ。
あんまりションボリしてるから
「じゃあさ、今週は俺と遊ぼうか」
「えっ?」
そう提案してみたら、ニノがパッと顔をあげた。
「でも···絵はいいの?」
「うん、1つは完成したし。ずっと描いてたからちょっと休むよ。雅紀にも声掛けてさ、久しぶりに3人で遊ぼ」
「うん」
「雅紀もお盆はバイト休みなはずだよ」
みるみるニノの顔が明るくなる。
「明日さ、雅紀のバイト先行ってみる?」
「うん!内緒で行って驚かせようよ!」
やっと可愛い笑顔が見れて嬉しくなった。