第9章 夏休み３

「智、可愛い顔でスマホ見てるんだもん。分かっちゃうよ」
「可愛くないってば！」
「潤くんなんだって？心配してた？」

にまにましてるニノは、否定しても聞いてくれない。

さっきから俺の言うこと流されてばっかだな。

「······うん」
「意外と潤くんも心配性なんだね。翔ちゃんと一緒だ」

翔くんの名前が出てハッと思い出す。

「ねぇ、翔くんかなり心配してたんじゃない？早く帰らなきゃ」
「あっ、そうだった！」

２人でちょっと急ぎ足でニノの家に向かう。
ニノの家は駅から近いから急げばすぐだ。

「送ってくれてありがと。智も気を付けて帰ってね」
「大丈夫！でも気を付けるよ」
「今度ゆっくりコイバナしようね」
「恋じゃないってば···たぶん···」
「ふふっ、じゃあまたね」

ニノの中ではすっかり片想い仲間ってことで確定してしまったっぽい。

本当に楽しそうだ。

「早く翔くんに連絡しなね」
「智も帰ったら潤くんにするんだよ？」
「······」
「するの！」
「······分かったよ」

ちゃんとするつもりだったけど、素直に言うのはやっぱり恥ずかしくて。

でもそんな気持ちももしかしたらニノにはバレてるのかも。

だってクスクス笑ってる。

「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」

ニノは手を振って家の中に入って行ったけど、ドアが閉まりきる前に

「もしもし、翔ちゃん？今家に着いたよ···」

翔くんに電話する声が聞こえてきた。

本当にすぐ連絡してるニノが微笑ましくて可愛くて。

自分の気持ちはやっぱりよく分からないけど。

とりあえず俺も家に帰ったらすぐに潤に連絡しよう。

そう思いながら、何となく家に向かう足を早めた。