第1章 恋に落ちる
ーSsideー
その日、俺は日直で。
放課後日誌を届けに行ったら、ついでに担任にあれこれ雑用を言い付けられ、しまいにはゴミ捨てまで頼まれた。
めんどくさいなーと思いつつ、ゴミ置き場に向かう途中で裏庭に向かう丸山を見かけた。
裏庭はゴミ置き場の更に奥で、あまり人が近付かないし、死角が多い。
それ故、告白スポットとなっている。
男子校で告白スポットっていうのもおかしな話だと思うが。
潤にあんな話を聞いた後だった俺は、何だか嫌な予感がしながら、とりあえずゴミを捨てに行く。
教室に戻ろうとしたタイミングで、今度は裏庭に向かう二宮くんを見かけた。
嫌な予感が確信に変わる。
いてもたってもいられなくなった俺は、こっそり二宮くんの後をつけた。
2人に見つからないギリギリまで近付くと、そっと木の影に身を隠す。
すぐに二宮くんと丸山のやり取りが聞こえてきた。
何だか俺が緊張する。
やがてはっきりと
「二宮くんが、好きだ」
丸山の告白が聞こえた。
そのまっすぐな告白を聞いた途端、自分がものすごく恥ずかしくなった。
告白どころか、普通に話し掛けることすら出来ないくせに。
そのくせ、他の誰かに告白されるかもと思ったら焦って後をつけて
こんなところで隠れて盗み聞きしている。
なんて情けない···
もしこれで2人がうまくいったとしても、それは勇気を出した丸山の正当な権利だ。
もう帰ろう。
そっとその場を離れようとした、その時
「やだっ!離してっ!」
突然、二宮くんの声が響いた。
驚いて振り向くが、2人の姿が見えない。
「やめてっ」
悲鳴のような声が続く。
俺はもう何も考えられなくなって、二宮くんの声がする方へ走った。
「やだっ!誰か...」
俺の目に飛び込んできたのは
二宮くんの首元に顔を埋める丸山と、何とか逃げ出そうと必死にもがく二宮くんの姿だった。
ネクタイは地面に落とされ、シャツが胸元まではだけている。
「二宮くん!?」
二宮くんの顔は真っ青で、見て分かるほど震えていた。
丸山は俺が現れたことにも気付かないのか、二宮くんを抱き締め続けている。
瞬間的に怒りで頭が真っ白になった。
力任せに丸山を引き剥がすと、二宮くんを自分の後ろに隠す。
こんなやつの視界に少しでも入れたくなかった。