第14章 衝突
一気に捲し立てると少し怯えたように俺を見る一花。
そんな彼女を見ると一気に罪悪感が押し寄せる。
「す、すまねぇ…。…でも、今言ったことは全部本心だ。…俺は一花と出会ってから面倒だなんて思ったことねぇし、むしろもっと頼って欲しいくらいだ。」
あまり反応がない一花の肩を掴み、優しく問いかける。
「なぁ、一花。俺にはお前しかいねぇんだ。…だから一人でなんて、そんなこと言うな。な?」
本当に俺には一花しかいなかった。一花がいるから生きてこられた。いや、生きている。
一花こそが俺の生き甲斐だ。
その言葉に少しは反応を見せたものの、顔を俯かせたまま小さく呟く。
『じゃあ、なんで芽美と抱き合ってたの…?』
「えっ?」
あまりに小さい声だったからよく聞こえなかった。
「一花、なんて言ったんだ?もっかい教えてくれ。」
『何にもない。』
「何にもない事ねぇだろ。」
『何にもない!!』
肩を掴んでいた手を振り払われ、一花に怒鳴られた。あまりの一花の激昂ぶりに俺は呆然とする。
『あっ…。』
「……。」
『あ、あの、ごめんなさい。』
「いや、いいんだ。」
『だけど…!』
「いいから!…今はゆっくり休んどけ。俺たちが喧嘩しても何の意味もないだろ。」
『大我…。』
「おやすみ、一花。風呂になったら起こす。」
『待って大我…、きゃっ!』
俺が腰を支えていた手を離すとすぐに体制を崩す一花。一人で座る事も出来ないのに、なんで急に一人でなんでもしようとしたんだ。
少し愚かとも言える一花の態度に少なからず腹を立てていたのは事実だった。
いや、やっぱり焦っていたのか。
一花は俺の腕の中でずっと生き続けるはずだった。それがいま、一花が自ら少しずつ俺の腕から離れようとしている。
その事実に俺は確かに焦っていた。