第13章 亀裂
冷蔵庫にあった具材で適当に炒め物を作る。
その間も一花は無言で俯いていた。
料理が完成し、ご飯とサラダと共に食卓へと運ぶ。
「ほら捕まれ。」
一花の前に屈むと、慣れた手つきで俺の首に手を回す。そっと持ち上げ椅子へ座らせる。
その時の表情は見えなかったけど、いつもより暗い気がした。
『「いただきます。」』
二人で食事を始める。机越しに見る一花の顔は先程よりは落ち着いて見えた。
やっぱり調子が悪かったのか?
「一花。」
『何?』
「調子どうだ?」
『心配しなくて大丈夫。もう平気だよ。』
そう言って微笑む一花。
本当かどうかは分からないが、一花がここまで俺を突き放すのは初めてだったので俺はかなりショックを受けていた。
「そうか…、なら良かった。」
しばらく沈黙が続く。
カタッ
その沈黙を破ったのは一花が箸を置いた音だった。
「もう食わねぇのか?」
『うん。お腹いっぱいで…。すごい美味しかったよ、大我ありがとう。』
「いや、それはいいけど…。調子悪くなったらいつでも言えよ?」
『うん、ありがとう。ちょっと寝てもいい?』
「お、おう。」
俺は一旦食事を中断し、一花の体を抱えてベットへ運ぼうとする。しかし、その腕をやんわりと掴まれ、
『車椅子にして。自分で行くから。』
「で、でも、」
『いいから!お願い、そうして…?』
一花のこの言葉には驚き、そして焦りを覚えた。
俺は一花と暮らしていくうちに少しずつだが一花の行動に制限をかけていき、俺なしでは生きられない身体にしていった。一種の依存だ。
これに一花は軽い抵抗はしたことがあるものの、はっきりと拒否したことはなかった。
だが、さっきの一花の言葉は明らかな拒絶だ。
その事実に俺は確実に焦りを感じていた。
「分かった…。気ぃ付けろよ。」
『ありがとう、大我。』
そう言って控えめに笑う一花。
そんな一瞬さえ愛しいと思うんだから、俺は相当一花に依存している。