第13章 亀裂
「ありがとうございましたー!」
最後の客を見送り、店を閉める。
カタンと扉の閉まる音に、今日一日の仕事が終わった安堵感と一花に会える喜びが溢れる。
今日は何を作ってやろうか。
客には申し訳ないが、一花のために作る料理は特別気持ちを込めて作っている。
俺の料理を食べて笑う、あの瞬間の一花の笑顔は反則的に可愛い。
改めて、俺は一花無しでは何もできないことを知った。
「か…っち、かが…っち、火神っち!」
黄瀬の声で意識を引き戻される。
「すまねぇ、何かあったか?」
「何かあったか、じゃねぇッスよ!火神っち、顔緩み過ぎッス!もう、俺ら帰るッスよ。」
「あ、あぁ。ありがとな。」
「また、明日。」
「おぉ。」
帰る間際、青峰と目が合い何かを伝えられる。
恐らく、さっき厨房で言われた事だろう。
その事なら心配ない。
その思いが伝わるように、力強く頷く。
その意図を理解したのか、青峰は少し笑いながら帰路についていった。