第12章 予感
お店が開店し、パラパラと客が入り始める。
仕事中の俺は、ほとんど厨房で料理を作っている。
接客やレジは黄瀬達に任せて、料理に没頭する。
「ほい、オムライス。」
「はい、はーい!」
黄瀬の勢いのいい返事で店が活気付く。
…あいつ、ほんとこういうの向いてるな。
そろそろお昼時になり店がだんだんと忙しくなってくる。
うちの看板メニューはオムライスだ。
一花の好物をどうしても上手く作りたくて練習してたら、かなり美味い物になっていたらしい。
一花のおかげだな。
一花のことを思い浮かべるだけで緩んでくる頬。
その頬を浅黒い手でペチッと叩かれる。
「おい!何すんだよ!」
「お前こそ、何ニヤニヤしてんだよ。そんな事してる暇あったら、さっさと作れ。」
「分かってるよ!」
軽く言い合いをしていると、急に肩を組まれる。
「お、おい。急に何だよ。」
「お前、何があっても一花から離れんなよ。」
突然、変なことを言い出す青峰。
「何言ってんだ…?」
「そのまんまだよ。…俺は忠告したからな。」
そう言って、すぐに離れていく青峰。
青峰のあの真剣な表情。
やっぱり何か起こるのか…?
パチッ
不意に視線を感じ振り向くと、広瀬が俺をじっと見つめていた。
そして、ニヤリと不気味な笑みを浮かべそのまま仕事へ戻っていった。