第11章 お仕事
しばらくの間、俺たちの出会いを思い出していた。
『大我…?どうかした?』
「いや、何もねぇよ。」
不思議そうな顔をする一花を優しく撫でる。
すると気持ち良さそうに目を閉じる。
…まるで俺に全てを預けるように。
あれから5年、長い年月をかけて俺は一花の生活に少しずつ制限をしていった。
それは俺無しでは生きられないようにするため。
まずは車椅子から遠ざけ、移動したい時は俺が抱えて動くようにした。
初めは拒否感を示した一花だったが、しばらくするうちにそのスタイルに慣れていった。
俺が仕事などでいない時は車椅子を出すようにしている。
間違った愛情だと言うことは分かってる。
それでもあの時芽生えた思いは俺の中で確実に大きくなっていった。
そして今に至る。
無防備なおでこに自分の唇をそっと当てる。
「一花、そろそろ時間だ。行かねーと。」
名残惜しいが俺にも仕事がある。今からその仕込みをしなくてはいけない。
『…そっか。今日も頑張ってね。」
「おう、任せろ。」
ちなみに俺のカフェは俺たちが住んでる家の一階で経営してる。
だから、会おうと思えばいつでも会える。
そんな事を言いつつも一時でも離れるのは嫌だった
車椅子で玄関まで送ってくれる一花。
その唇に軽くキスを落とす。
「じゃあ、行ってくる。」
『いってらっしゃい。』