第9章 不安
ーチュ。
一花の身体の向きを変え、静かに唇を重ねる。
俺の手で包めてしまう小さな頭に、少しの恐怖を覚える。
ーいつか傷付けてしまわないだろうか。
俺だって健全な高校3年生、性欲だってもちろんある。
繋がりたいと思っていたのも事実だった。
だからこそ怖かった。
いつか俺が暴走して一花を酷い目に遭わせたら?
抑えられる確証は無かった。
当分答えなど出ない問いに頭を悩ませる。
すると、何かを見透かしたように唇を離す一花。
俺の目をじっと見て、
『大我、何考えてるの…?』
「…別に、なんでもねー」
『何でもなくない。…話して?お願い。』
「お前を、一花をいつか壊してしまいそうな気がして怖いんだ…。情けないよな。…でも、自分を抑えられる自信が無いんだ。」
すると、一花は俺の腰に腕を回し顔を胸板に埋める。
『私、大我になら何されてもいいよ?大我、言ってくれたよね。私だから守りたいんだって。私も一緒。大我だから一緒に居たいと思うの、生きたいって思うの。だから、何されても嫌いになんかなったりしない。』
「…一花。」
『キスして、大我?…我慢しないで。』
その言葉を皮切りに俺は激しく一花を求めた。
甘く、柔らかい唇に自分のそれを重ねる。
何度か角度を変えて啄ばみ、一花の唇を割る。
開いた隙間から舌を入れ、お互いのものを絡める。溢れそうになる唾液を一花に送り込む。
一花はそれを抵抗する事なく飲み込む。
その仕草にひどく興奮した。
苦しそうな一花を尻目に彼女の弱点である上顎を舌で舐める。
すると、一花は小さく喘ぎ身体を震わせた。
さすがに限界そうだったので、最後に軽く口づけお互いの身体を離した。
「…大丈夫か?」
『うん、大丈夫。』
「…ありがとな、一花。」
『…?何が?』
「さっきの言葉、あれすげー嬉しかった。」
『あぁ、そんな。本心を言っただけだから。』
「…、はぁー。」
『何!?何か変なこと言った?』
何も心配することは無いのかもしれない。
たとえ不安になろうと俺には一花がいる。
それだけでいいのかもしれない。