第9章 不安
お風呂から上がり一花を膝の間に座らせ、髪をドライヤーで乾かす。
俺が髪に触れる度気持ちよさそうに、時々擽ったそうに目を閉じる。
柔らかい髪質はやはり男のそれとは違って、女性特有のもので変にドキドキした。
温風に乗って香るシャンプーの匂いに紛れて一花自身の香りを感じる。
これを体験できるのはこれから俺だけだと思うと、少し独占欲が満たされた。
髪にスルスルと指が通るようになり、ドライヤーのスイッチを切る。
「終わったぞ。」
顔だけをこちらに向けフワリと微笑む一花。
『ありがとう、大我。』
「どういたしまして。」
…まただ。
前から感じていた一花がどこかに消えてしまいそうな感覚。
彼女が綺麗に微笑む度そう感じるのは俺の気にしすぎなのだろうか。
どこにも行って欲しくなくて後ろから少し強めに抱きしめた。
『…どうしたの?』
お腹に回された俺の腕にそっと手を添えてそう問いかける。
その問いかけを無視して、一花の細い首に顔を埋める。
途端にさっき満たされたはずの独占欲がまた顔を出してきた。
それを必死に沈めようと一花の首にキスをする。
『…んっ、大我。擽ったいよ。』
一花の声は御構い無しに、今度は首筋の一点を吸い上げる。
『っあ…。』
小さく声を上げて反応する一花。
そんな彼女の首筋には小さな紅い印がくっきりと付いていた。
『大我…。』
手を出せない事は分かってる。後で辛いのは自分達だ。だから、一応一花にも許可を取る。
「なぁ…、キスしていいか?」
一花は頬を赤らめ、そっと頷いた。