第8章 お風呂
いよいよ大事な所に触れる。
「…一花、触るな?」
『うん、ごめんね…。』
「あんまり謝るな。俺がやりたい、って言ったんだ。」
『うん、ごめん。』
一花は静かに涙を流す。拭ってやりたかったが、泡が付いてるせいでできなかった。
閉じていた足をそっと開き、中心へと手を伸ばす。
そっと触れ、なぞるように洗う。
俺も洗い方なんて分からなくて、とにかく優しく洗った。
後ろの双丘の間にも手を入れ洗い、その輪郭をなぞるように撫でながら洗う。
その間二人はずっと無言で、一花の鼻を啜る音だけが響いていた。
ようやく泡を流し、洗い終える。
一花の身体を起こし、なるべく優しく抱きしめた。
「なんで泣いてるんだ…?」
しばらく無言の一花。
「俺には言いづれぇか?」
『…。ごめんね、大我。ごめんね。』
ひたすら謝っている一花。
俺の首に手を回す。
『ごめん…。』
「何で謝ってるんだ…?」
『こんなお荷物みたいな女、嫌いになった…?』
一花はいつも自信のなさげな事を言う。
俺からしてみれば、俺にはもったいない程の人だ。
そんな人をこの手で支えていけること、俺はむしろ嬉しいと思っている。
「一花…。俺が病院で言った事覚えてるか?」
『…うん。』
「一花が不安になるなら何度でも言う。俺はお前をこの手で守りたいんだ、支えたいんだ。今すぐに分かれとは言わない。だから、少しずつでいい。俺にお前を預けてくれ。」
『大我…。』
「俺はこんな事で一花を見捨てる程軽い気持ちで、お前と居るんじゃない。一花の人生に責任を持つつもりで一緒にいるんだ。こんな事どうってことない。」
『…大我。今のって、』
「こんなとこで言うのもおかしいけど、そういう事だ。…だから、泣かないでくれ。」
『…うん、大我。大我…。』
「何だ…?」
震える肩を抱きしめ、頭を優しく撫でる。
『ありがとう…。ありがとっ、ふっ、ぁあ…。』
見えない不安を吐き出すように、俺の肩に顔を埋めて大泣きする一花。
その不安を少しでも取り除くように、細い身体をずっと抱きしめていた。