第5章 過去
「じゃあ、また明日…。」
『うん。ありがとう。気をつけて帰ってね。』
「おう。…なぁ、三浦。俺のこと恨んでるか?」
火神君が突然変なことを言い出した。
『…どうして?』
「だって…!俺のせいでお前の身体が…。」
なんだ、そんなことか。火神君は本当に優しいな。
『…火神君。あのね、気にしてないって言ったら嘘になる。』
その瞬間、火神君はバツの悪そうな顔をした。
『けど、それ以上に火神君を守れたこと。火神君から大好きなバスケットを守れたこと。それが、何よりも嬉しいの。』
火神君は大きな瞳に涙をいっぱい浮かべていた。
『それって、おかしいのかな?』
火神君にそう問いかける。
「いや、おかしくなんかねー。…俺だって三浦と同じ立場だったら、多分同じことしてたし、同じ風に思うと思う。」
ほら、やっぱり火神君は優しい。
『そういう事。だから火神君、気にしないで?明日、待ってるね?』
私はずるい人間だ。火神君の優しさにつけ込んで、火神君を縛り付けてる。
「おう、待ってろ。明日は黒子も連れてくる。」
『うん、ありがとう。』
あの時、私にとって頼れるのは大我だけだった。
…いや、それは今もか。