第5章 過去
「じゃあ、練習はこれで終わり!お疲れっした!」
ふりが新しい部長に就任し、俺たちは3度目のインターハイを目前にしていた。
「ふり!ちょっと、自主練してってもいいか?」
「いいけど…。ほどほどにしろよ?」
「分かってるよ。じゃあ、お疲れ。」
「おぉ、お疲れ。最後、鍵よろしくな。」
「おう。」
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「ちょっとやりすぎたか…。」
時間は8時になろうとしていた。
俺は急いで着替え、体育館の鍵を返しに行った。
その途中で三浦を見つけた。
向こうはまだ気づいてないみたいだ。
俺はあいつの隣に行き、声をかけた。
「よぉ。」
すると、三浦はビクッと肩を揺らし
『!!…なんだ。火神君か〜。びっくりした〜。』
「悪りぃ。でも、こんな時間まで何やってたんだ?」
『部活だよ。展覧会が近くて…。』
「そういえば三浦は美術部だったけか?」
『そうだよ。なかなか作品が仕上がらなくて…。火神君は?』
「俺も大会が近くて。自主練してたら、こんな時間になってた。」
我ながらバスケ馬鹿だな…。
『…あははは!』
突然、三浦は笑い出した。
「おい、何がおかしいんだよ。」
さっきの俺の発言に笑う要素なんて無かったはずだぞ…。
『いや、別に?本当にバスケが大好きなんだなぁと思って。』
そんなことかよ。
だけど、俺の事を何となく理解してくれているようで少し嬉しかった。
「まあな。ずっとやってきてるし。全国にはめちゃめちゃ強い奴らがゴロゴロいるんだぜ!?早く戦いたくてたまんねーや!」
ついつい、俺が熱くなっても三浦はそっと包み込んでくれるかのような微笑みで
『そっか…。楽しみだね!』
そう言ってくれた。
てゆーか、こいつこんな時間に1人で帰るのか?
「なぁ、三浦。」
『何?』
「お前これから1人で帰るのか?」
『そうだけど…。』
「はぁ!?女1人じゃ危ねーだろ!?俺が送ってく。」
『べ、別にいーよ!そんなの!』
「いいから。大人しく送られとけ。」
『…分かった。ありがとう。迷惑かけてごめんね?』
「俺がやりたくてやってるんだ。気にするな。」