第19章 翌朝
左手を強く握られる感覚に目が覚める。
隣にいる一花はまだ夢の中だった。
右手でそっと一花の頭を撫でてやると、もぞもぞと動きゆっくりと目を覚ます。
「悪りぃ、起こしちまったか?」
『ううん、大丈夫。勝手に目が覚めただけ。』
それでも頭を撫でる手は止めず、しばらく一花とベッドの上で話す。
「体、辛くねぇか?」
『ううん、何ともないよ。』
「そうか、疲れたならもう少し寝ててもいいんだぞ?」
『本当に大丈夫!大我ってば過保護だよ。』
「そんなことねぇよ。」
軽く笑い合い、一花のおでこに口付け体を起こす。
いつも通り一花の下に手を入れて、そっと抱き上げる。
すると、すぐに俺の首に顔を擦り寄せる一花。
「どうした?今日は随分甘えただな。」
『だって嬉しいんだもん。大我がそばに居てくれることが。』
「…あんま可愛いこと言うな。」
あの後、簡単に朝食を済ませそれぞれ仕事の準備をする。
「じゃ、そろそろ行ってくるわ。」
『分かったー。』
そう声をかけると、すぐに部屋から顔を出し玄関までやってくる一花。
そんな彼女の唇に軽くキスを落とし、そっと肩を引き寄せる。
「行ってきます。」
『いってらっしゃい。』
軽く手を振り合い一花と別れると厨房に向かう。
そこにはいつもなら居ないはずの青峰がいた。
「お前っ、なんでここに居んだよ!」
「なんだっていいじゃねぇか。それより…、」
突然肩を組まれる。
「一花とどうなったんだ。」
確かに青峰には教えなくちゃいけない。
一花は青峰に随分と世話になったみたいだしな。
「ちゃんと話し合ったよ。」
「…そうか。んで、お互い納得できたのかよ?」
「もちろん。…ありがとな、青峰。お陰で一花をもっと幸せにしてやれそうだ。」
「あっそ。一花によく頑張ったって、伝えといてくれ。」
「分かった。…お前、わざわざそれ言うために来てくれたのかよ。」
「なんか悪かったか?」
「…いや、まじサンキューな。」
「おう。一花によろしく。」
「任せとけ。」