第7章 旅行
「わぁ……大きい……」
圧倒される大水槽の中で、海の巨大生物であるジンベイザメが優雅に目の前を通り過ぎた。お腹部分に小判鮫が何匹もひっつく。
「凄い…綺麗……あ、」
エイも横切る。なんと平べったい。口がパクパク動いている。つい笑った。口マグロやら小さなサメやら、種類がわからない。たくさんの種類の魚が同じ水槽の中で泳いでて。
さっきのゾーンは、海の中を散歩しているような感覚の、トンネル水槽も潜った。
初め入口には、ヨタヨタ歩くペンギンもいた。赤ちゃんが歩くみたいで可愛くて悶えた。
「そうだな……癒されるな」
となりで分厚い水槽をいっしょに眺める田中先生の頬に、水槽の青い光が当たる。CGのイルミネーションが天井や床にスライドされている。
幻想的な世界のようで、綺麗でキラキラしてて……先生も美しくて、ずっと見つめていられた。
幸せ……と、わたしが浸っていれば
ひそひそと小声で喋る声が聞こえるのだ。
"ねぇ、あれ、みてみて"
"うわ、カッコいい……"
"声かけてみる?"
"えー!ヤダァ!ムリムリ!"
今日はお仕事が休みなのだろうか。OLの女性のお姉さん達が喋る声が斜めから聞こえる。田中先生を私を間に挟んで覗いている。即効にやめていただきたい。
どこへ行っても
ウンザリするような、はしゃぐ声が、わたしの耳に届いた。
「せ、せん、あ、違う。健斗さん、つぎ行きましょ!」
しかーーし。ふふふ。今日は、わたしが先生の恋人なんです。残念ながら!分厚いコートの端を引っ張った。
「ん?ああ、行くか」
あまり気にしていないのは先生。いつものことだ……と言うけれども。
今日一日で何回も田中先生は逆ナンパされていてね。まあ、まあ、毎度毎度の話だけどさ。いや、今日は多いよ。特に多いよ。
なんせ名刺まで差し出さす強者までいた。アレは完全にスカウトだろう。芸能プロダクション?とか聞こえた。隠せないオーラが恐ろしい。