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先生とわたしの恋物語

第1章 12月7日


田中先生、いるかな?と、そぉっと美術デザイン教室の扉を開ければ、いつの間にか、わんさか女子が溢れていた。

後輩やら同級生と、まあ、純粋にデザインの自習課題をする友人の姿もチラホラといるけれど、半分以上は田中先生がお目当てだ。

自習課題を見てもらって、しっかり評価してもらいながら、「あ、そうか、ここのパーツ直したら良いんだー」とか言いながら、ソフトタッチも忘れない、後輩の姿は、まさに狩りをする肉食獣。ハイエナだ。

いや、そのソフトタッチに鋭敏に反応するのが、私達三年。いや、流石に今のは許せない。去年卒業した先輩方は、そういうタッチ系は辞めようって言って卒業したんだよ?

やめてやめて、触らないで!!とネチネチした視線を送るのに、全然応えない。

逆に後輩達は、真っ直ぐに視線が戻ってきた。

あと4ヶ月でこの場を去るんでしょう?ふ、田中先生は私達後輩のものよ。と言うような鋭い視線だ。挑発した態度を向けた後輩達。

はぁあぁ!?と電光石火の火花を散らした。

その間、十数秒にも視線がぶつかるバトルが繰り広げられた。いや、あなた、そんな事をしてる場合じゃないんじゃないの?10日までに終わらせるんでしょう?と、私の中で訴えかける心の声が聞こえた。

その通り!そうよ、こんな事をしてる場合じゃない。

一分一秒でも惜しいのよ、わたしは!この時間は無駄だ。と瞬時に判断して、空いてる席に座って、モチーフの瓶やらレンガ、布を置いてデッサンを始めた。

真っ白な紙に、鉛筆でパーツを取る。デッサンは一番得意だから、簡単に終わる。だから一番はじめに始めた。

大丈夫。大丈夫。焦るな。焦るな。

真剣に目の前のモチーフを見つめ、鉛筆を滑らすように描いていた。不思議とざわざわした音は聞こえなくなる。聞こえてるけど、耳に入らなくなる。集中していると、必ず周りの音は気にならない。

ただ、真っ直ぐに目の前のモノに集中していた。


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