第7章 旅行
「せ、じゃなかった!健斗さん!!あれ、あれ乗りましょう!」
わたしは高くそびえるジェットコースターを指差した。最高速度160km/h。最高高度がなんと100m!となりに並ぶ観覧車よりも高いのだ。コース全長2000m。わたしは看板の説明書を読みながら、目を光らせた。なんて面白そうなの!!
「キャァァァアー!!!」
悲鳴と豪速で走るジェットコースターがぐるんぐるんと後ろ向きに回転する。さらにお客さんは立っている。きっと爽快な気分になるはずだ。あれに乗ってキャアキャア叫びたい。
「せ、じゃなかった。健斗さん、さあ行きましょう!」
田中先生のほうを振り返ると、天を見上げて、回る悲鳴を追いかけていた。途端に顔を硬らせた。
「あれに……乗るのか?マジで言ってんのか、お前……」
あれ、超イヤそう。
「当たり前じゃないですか!なんのために遊園地に来たんですか!今日あんまり寒くないですね♪さあ、さあいきましょうーー!」
嫌がる腕を引っ張り、列に並んだ。さすがに冬休みもあって、大勢のお客さんが並ぶ。身長制限もあってか、このジェットコースターは、カップルや友だち同士の方が多かった。
「やる気満々で悪いが、あれ結構高いぞ?」と先生。
「マジでやるのか?」
「大丈夫ですよ!全然恐くないですよ!わたしがついてますよ」
田中先生って
苦手なものがあったようだ。
「俺は恐くて言ってんじゃねーぞ」
念押しするけど、わたしの手をギュッと握ってる。かわいい。田中先生の意外な一面が見れた気がする。
「えへへ、楽しみですね」
わたしはニコニコご機嫌だ。だれも生徒と先生だなんて気づかない。カップルだって思われてるかも。
「ねぇねぇ、あの人モデルかな」
チラチラ視線が自然と田中先生に向かう。後方のカップルなんて喧嘩し出した。なぜだ。
「健斗さんって、大変ですね。いつも誰かに見られてしんどくないですか?」
芸能人と会話してるみたいだ。なんて質問だろうか。もう一度言おう。となりに並ぶモデル並みの甘いマスクと長身男性は、美術の先生だぞ。決して芸能人やモデルではない。