第7章 旅行
「まあ、もう慣れたな。小さな頃は……さすがにイヤだったがな」
「そうなんですか」
幼少期から田中先生は女性にモテモテだったようだ。そりゃ同世代の女性が、モデルのように目鼻立ちが整う男をほっとくわけがない。
「もし、わたしが先生と同じクラスになれたら、それだけで毎日バラ色生活です!」
最高だろうな。ずっと見つめれるなんて幸せだろうな。落とした消しゴムを拾ってくれた日には、消しゴムを神棚で拝むかもしれない。尊い毎日が送れるだろうな。
頭で薔薇は毎日を考えていれば、先生は複雑な表情で、ぐしゃぐしゃと頭を撫でた。
「おまえは、そうかもしれんが」と田中先生は呟く。
「俺は……青春の思い出は、あまり良くはなかったな」
なんて先生は溜息を吐いた。
「小学校から突然下校中に写真をカメラで撮られたり、待ちぶせされるのが日常茶飯事だったんだよ。プライバシーもクソもねぇな」
ジェットコースターの順番を待つ間、先生は学生時代の話を始めた。学年が上がるたびにエスカレートして、最後はゴミまで漁られたらしい。
「…うーん…イヤですね。さすがに…」
美人やイケメンに産まれたら、バラ色の人生で得な未来が待っていると私は常々思ってきた。
目立つ人生というのは、人によっては、生きにくいのかもしれない。
平々凡々が、もしかしたら
いちばん幸せなのかもしれない。それが一番難しいのかもしれない。
「まあな。だからな、恋愛だってまともにしたことねーんだ。俺の彼女になる奴は、みんな、なんかしら嫌がらせされるからな」
先生は沈んだ表情に変わった。嫌がらせ。いじめ。リンチ。恐ろしい…ひぃ。
わたしは悲しそうな先生を
少し見ていた。