第7章 旅行
「気をつけろよ。飛ばされるぞ」
田中先生はサングラスのまま
口をニィッと横に伸ばした。こちらは見てない。前方を見たままだ。
「綺麗か。良かったなあ。オレは一瞬しか見れねーがな。車体が強風で煽られるんだよ。ハンドルしっかり握ってオレが運転しなきゃ死ぬぞ、お前。それでもいいのか?」
死ぬ!?橋から落ちるって!?となりの車にぶつかるってこと!?ひぃ…!
「わ、わかりました!黙って座ってます!」と言って素晴らしい景色を眺めた。脇見運転を促してはいけない。死んだら終わりだ。絶対危ない。
田中先生はハンドルを握る。アクセル全開だ。運転中顔を見ると楽しそうに見えた。サングラスつけて目元は見えないけれど、口もとは緩んでいるのだ。
「今から海の見える温泉行こうぜ。ちょうど昨夜ネット見たら空いてたんだよ。市川が好きな水族館やら遊園地が近くにあるぜ。面白そうだと思わねーか?」
「え!?遊園地!?水族館!?行きたい行きたい!行きたいです!」
目をキラキラ輝かせた。田中先生って超能力者なのかもしれない。わたしが好きな場所を知ってるなんて。
「楽しみですね、田中先生!」
「ああ。そうだな」とサングラスが太陽の光で輝く。
先生って芸能人の血筋ではなかろうか。格好良いオーラが溢れる。車内は暖房が効いて暖かい。わたしは心地良くて、つい寝てしまいそうだった。