第6章 先生のお家 R18
18階についた。エレベーターが開いて、焦げ茶の絨毯が敷かれた廊下を歩いた。壁に日本画が飾られる。圧倒される風景画に目を奪われた。描写が細かくて色が鮮やかだ。
「お、それな、俺が描いたヤツだ」とニヤリと田中先生が笑う。書いて欲しいと管理人から頼まれた作品らしい。
「え、本当ですか!!」
目をまん丸にした。先生の日本画なんて奇跡に近い。見たことない。
田中先生の作品は日本画どころか、普通の作品さえ貴重だ。なかなか学校では見れない。
毎年の作品展のみ飾られるが、はっきり言おう。田中先生の作品の周りには、常に長い行列が出来る。
尊い。拝むレベルの作品だ。
とりあえずカメラでカシャっと撮影すれば、頭にチョップが落ちた。
「おい、お前何してんだよ不審者か」
「いやいやいや、だって、あまりに素晴らしすぎて…。美術を志す人間なら必ず撮影します!」
確信が持てる。
「ほら、もういいだろ行くぞ」と手を繋いで歩いてしまう。もっと見たかったのに……!
でも手を繋いでくれたのは嬉しい。複雑。
しかし。
よくよく考えてみれば、マンション玄関入り口にも、油絵の洋画作品があった。確か街の風景画だったはず。
「田中先生、入り口の作品も?」
「ん?ああ、全階に飾ってんぞ」
「マジですか!」
なんとしても見に行きたい。そうだ。誰かの友人のフリをして勝手に侵入すれば……と思ったが、それじゃあ、わたしが不審者だ。
先生の住むところは、いちばん突き当たりの角部屋の南向きだった。
扉は車のように、キーのボタンを押せば鍵が開いた。人類の進歩は…以下略。