第6章 先生のお家 R18
田中先生とエレベーターに乗ると、すでに18階と押されている。なんでだ。超能力?
「なにを驚いてんだよ。防犯上、俺は他の階に乗れないようになってんだ。まあ他の人もそうだがな。自分の住む階しか止まらないようになってんだよ」
「そうなんですか。素晴らしいですね、人類の進歩が」
いやだがしかし。
なぜ帰ってきたと分かるんだ、と思ったあとに、すぐに気づいた。
そうだ。最初の入り口で、先生は鍵をセンサーに当てた。それに反応して、エレベーターも連動しているようだ。
「便利な世の中ですね」
わたしの住む築40年の古い家とは大違いだ。何を隠そう。玄関は引戸で一個の鍵だ。
ガラガラガラと生活音は丸出しで。
防犯カメラもセコ●もない。
こういう家が泥棒に遭うのだろう。お金がない家はセキュリティもない。
確か高校入学時に、防犯ブザーを学校から配られた。考えてみれば、あれぐらいだ。わたしのセキュリティは。筒抜けだ。
ひとりで留守番することを心配した田中先生。
わたしの家を見て、セキュリティを危ぶむ先生の気持ちが、悲しいことに少しわかってしまった。
セキュリティの雲泥の差を
まざまざと見せつけられた気分。
「じゃあ先生は、泥棒に遭う心配はないですね。泥棒の入る隙がないし」
「なに言ってんだ。こういうマンションの方が最近は狙われてるんだぜ? 宅配だ友人だと言っていっしょに入ったらお終いだ。防犯が完ぺきだと、逆に気が緩むからな。気をつけるのはどこにいても同じだ」と先生。
「お前は可愛いんだから、特に気をつけろよ」とわたしの頭を優しく撫でた。