第5章 奴隷として
「先生?」
「なんだ?」
「わたし、場違いじゃないですか?こんなところに来ちゃって…大丈夫かな…?」
わたしは窓ぎわの席にいる。窓からは星を散りばめたような夜景が見える。車が走る様子や電車が動く様子が上から覗けるのだ。
ここはTVでもよく紹介される、超有名なホテル。30階にあるレストランで、結婚式も出来るお店。
金額が……
メニューは恐くて見れない。
「なにを震えてんだ。普通にしろ。せっかくのクリスマスだろ?」
と、前に座る田中先生は平然と言うけれど、先生はバッチリ合ってるの。
服も常に黒でカッコよく決めているの。
ジャケットも似合うの。
わたしは可愛いふわふわのニットの服と、スカートにブーツの完璧なんだけども。
制服から可愛い服に着替えたばっかだけど、中身は高校生なの!
18歳なの。普通にいる高校生はこーーんなところ、こないの。ハンバーガーショップに行くの。こんなホテルに行かないの。追い出されちゃうの。
超がつくほど
場違いなのーーーー!!
とはーー叫べない。
「ハハハ…がんばります」
わたしは苦笑いで、ウェイターさんから渡された林檎ジュースを飲んだ。冷たくてスッキリする。果汁がたっぷり入ってる。市販のジュースとはひと味違う。
「先生、今日はありがとうございます。こんな素敵なホテルなんて、初めてで緊張しますね」
わたしは先生の白いテーブル掛けの相席に座るけれど、釣り合いなんて取れてない。ここにいるのが、まず場違いなのに。
「先生は」
「市川、呼び方はここでは"先生"は、やめないか?さすがに…な?」
と言う田中先生は頭を軽くかいた。そうだ。確かに、先生って言ってれば、すぐに先生と生徒だってバレてしまう。
「じゃ、じゃあ……田中……さん?とかどうですか?さすがに君じゃおかしいですし」
「他人行儀過ぎる。却下だ」
と先生はバッサリ切り捨てた。いやいやいや。君は無理だし……ちゃんなんてもっとおかしい……。