第5章 奴隷として
「あー、言わなくていい。大した金額じゃないからな。ほら、行くぞ」
「え、え、ちょ、ちょっと先生、あの!」
腕を引っ張る先生は強引だ。急いで制服を袋の中に入れてくれた店員さんにお礼を言い、私と先生は店を出た。白い雪がハラハラと降り出していた。
「わぁ…!綺麗ですね」
「ふ、本当だな。荷物持ってやるよ、ほら歩くぞ」
と先生はわたしの紙袋を手に取った。反対側の手で、わたしの手を握り、先生のコートに入れてしまったのだ。
コートの中で指を絡ませ、強く手を握ってくれている。
「せ、んせい?…あの素敵な服を買っていただき、ありがとうございます…」
どきんどきん。心臓がうるさい。冷たかった指がたちまち暖かくなる。先生は優しい表情で笑った。胸が熱くなり涙が出そうになる。
「ああ、気にするな。クリスマスだからな。市川の可愛い姿が見れて、俺も嬉しいよ」
先生、誰かに見られたら。
その言葉をわたしは言い出せなかった。田中先生の、あたたかい手を離したくなかったからだ。