第1章 12月7日
端正に整った顔だから、凄まじくモテる。この先生、29歳になるのに独身。
毎年毎年、卒業式に田中先生へ告白の行列が出来るほど。しかもまだ若い。売れに売れた、美術デザイン教師。この学校に通う女子は一度は必ず、ときめいてしまう。
卒業しても、一年ほど諦められない先輩方は、OGとして、オージーてのは、old girlといって、その学校の卒業生のこと。
そのOGとして、来ちゃったーー♡先生ーと言って近況報告ついでに、教室へと通ってしまう。
いやもう良いじゃん。流石にフラれたんだから、いい加減に諦めてよ。もうまさにネバーエンディングストーリー。古い。
ネバーネバーネバーネバー!
ズーーーっと田中先生には女が群がる。
2年と8ヶ月間、そんなモテる姿を幾度も幾度も、見たくなくとも、腐るほど見てきてしまった わたしは、田中先生にだけは、兎に角、絶対に恋をしてはいけない、惹かれてはいけない、と心のシャッターを閉めて、頑なに好きにならないよう努めていた。