第1章 12月7日
今、わたしの足取りは重い。
あの場から逃げ出した
行きとは、大違い。
あんなに明るくて元気で、前向きだった わたしは何処へ行ったの。
わたしの顔は歪んでる。
醜いし、嫉妬塗れで酷い顔。
誰が田中先生に
告白したって 普段は
気にも止めないよ。
でもね。
今日は違う。
今回は違う。
今は違う。
愛理だと話は違う。
心が激しく騒めく。
あんなキスをされたから
余計に心が乱れてしまう。
たった今、ひたすら危惧する事は、愛理に田中先生が、奪われないかという事。
愛理は可愛い。
彼女が笑えば、誰もが感嘆を漏らす、美貌の持ち主。それが愛理。
小悪魔な彼女は、可愛くて、弱いフリが上手で、次々と男を寝取ると有名な女。わたしの親友の彼氏も、寝取ってゴミのように棄てた女。
それでも愛理が好きだと、縋る男。醜態を晒してでも彼女を求める姿は狂気に近かった。
田中先生は、
愛理から告白をされても、
きっと断ると思う。
彼女より可愛い先輩でも、
先生は関係無く断ってきた。
うんざりする程
それは知っている。
わたしがずっと、
心配している事は、
身体で迫っていないかって事。
わたし とのやり取りを聞いたから、
今日はしないと思うけど、
後日、また出直すんじゃないかと思った。
あの可愛い愛理が、
先生を誘惑したら……?
我慢出来ないほど、
身体を使って押し迫ったら……?
ずっと彼女は、興味が無さそうな態度だったから、田中先生は、タイプじゃないんだって勝手に思っていた。
身体で迫るの?あの女……。
また、そうやって、女を使うの?
高嶺の花だなんて、男が言ってるだけ。
女は誰一人言ってない。
想像すらしたくない。
気持ち悪い……!!
死んでも嫌……
絶対に、触らせたくない。
あの女にだけは絶対、
触られたくない……!!
嫌だ……絶対嫌……!!
絶対にあの女にだけは……。
汚されたくない……!!
絶対に取られたく無い……。
廊下を歩くわたしはずっと、
ジェラシー塗れだった。