第1章 12月7日
いつも、出来るだけ、こういう顔は見せないようにしていたんだけどな。
ドクン、ドクンと胸が鳴る。田中先生、気づいてないの?愛理から告白されるんだよ?
ドアを開けて、廊下に出た わたしは、静かに閉めた。
「どうした? 何か用事か?」
はい、実は……、愛理の可愛い声を背中で聞きながら、わたしはロッカーへと急いで歩いた。愛理の告白なんて絶対聞きたくない。
また、今日も告白される田中先生。高校生活の世界は狭い。早く卒業して大学へ行って、素敵な恋をしたい。
田中先生を独り占め出来たら、
どれだけ幸せだろうね。
嫉妬で苦しみたくない。だから先生にだけは、絶対惹かれないようにしてるのにな。
あんな事、わたしのこと好きじゃないのに、して欲しくない。
そりゃファーストキスってわけじゃないよ。中学の時、お付き合いしていた人はいるけどさ、あんな激しいキスなんてした事無かったもん。
……愛理、可愛いからって、田中先生から御礼のキスとか、されてないよね?いくら何でも、外人じゃないんだし、……。
愛理は、他校の男の子が待ち伏せしちゃうぐらいモテる。可愛い彼女に勝てる要素はあるのかな……。
ぐちゃぐちゃになる。今泣きそう。
だから、先生に恋なんかしちゃいけないのに……!
真っ暗なロッカーの中へ、力任せに荷物を突っ込んだ。
一生懸命、わたしは
ドロドロな感情を、必死に抑え込んでいた。