第1章 12月7日
田中先生のせいで、ドッキンドッキン心拍を早めていた。冗談抜きで、あの先生、本気!?何恐い恐い恐い!!
……続きだ。もう、続きを頑張ろう。
気持ちを切り替えして、デッサンを再開していれば、数人が私の周りを囲む。やっぱりリンチ……ではなく、友人が近く寄ってきた。友人達は顔は笑っているのに、声はハイエナだった。
「田中ちゃんに何言われたの!?教えてよ、ねえ!?私達友だちでしょう?親友でしょう?」
そうよ、親友よね!?って隣のお友達と相槌打ってるけど、そうだっけ!?そこまで仲良かった!?グループ違うかったよね、私達。
召使いの話されちゃったぁぁ、なんか言えないし、言わないと一筆書いたばっかりだ。どう言えば良いかさえ分からない。
じんわり汗が頬を流れる私は、咄嗟にウソをつくしか道は無かった。
「さっき褒めたのは冗談だから」って言われちゃってーー、あはははー参っちゃうよねー田中先生にはーー、と懸命に笑った。
「なぁーーんだ、つまらないね」
帰ろっか、うん、そうだね。バイバーイ。と帰った友人達は爽快で清々しかった。
やはりハイエナ。女子は肉食系。男子が少ないこの学校。必然的に女は逞しくなっていく。
バタンと閉じた扉の上の壁には掛け時計が、チ、チ、と針を動かす。
あと10分経てば5時になる。
マズイ……。やらないとダメだ。間に合わなくなる。
その後は、何か音や声や、ドアが開け閉めされる音が耳に聞こえても、一切無言でデッサンを描いていた。
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