第7章 〜闇夜の邂逅に白き魔術師、驚き好きの鶴も添えて〜 後編
届け物に仕掛けがあって、怪盗キッドに侵入を許した。小五郎のその声に動揺が走るが、正気に戻るのは矢張り早かった。中森警部の大きな怒声が、部下に素早く指示を与える
「神門の警備隊を今すぐ呼んでこい!俺たちが先にキッドを追いかけ、態と突破させたら挟み撃ちにするぞ!!」
「「はい…!!」」
事前に打ち合わせを済ませていたのか、返事の時には動いていた警察。警部を含む数名の刑事が岩戸の中に突入し、伝令役の刑事が一人神門の方へ駆けて行った。すると、それに伴って前者を追いながら、小五郎も「先生…?!」と驚く弟子へ半ば一方的に指示を出した
「俺たちも二手に別れるぞ安室!お前は麻衣嬢達と一緒に、警備隊と此処を張れ!」
いいな、と最後に強く念押して小五郎もまた岩戸の中に消えていく。暗闇の中でライトでも点けたのか、光の筋が彼方此方動いて、ガタガタバタバタと物音も響いた。そして。次第に遠ざかっていく彼の気配は、慌しくも残された四人に僅かな静寂を生んでしまう。そこで安室は違和感を抱いた
「(……可笑しい。どうして彼らは、こんなに冷静な状態でいれるんだ?)」
鶴丸にとって、改造した岩戸が突破されたのはショックの筈だ。麻衣にしても、仲間が偽物で読みを外した事実がある。多少なりとも動揺するなり、悔しがるのが普通だった。ところが、麻衣達は緊張の面持ちこそすれど、騒がないし冷静なまま警察の動向を見守っていた。そこまで考えを巡らせた安室は、ある途轍も無い仮説へと至る
「(もしかしてっ!態とキッドに侵入を許したのか?!)」
それはピシャンッと安室の心中に、電気が打ち付けられた瞬間だ。何故、どうして。そんな言葉が、裏切られた絶望と苛立ち間で、彼自身をも戸惑わせる
「……麻衣さん、貴方達気づいてましたね。先程現れた伊達広光さんが、怪盗キッドの変装だと」
「……はい」
努めて平静を装っている声音が、麻衣達四人に問いかけた。押さえつけないと、未成年の女性相手に酷く怒鳴りつけそうになる。何か理由があるのだと思った。でないと、闇夜の境内を見つめる麻衣が。罪悪感で気まずそうな横顔が、憂いた表情ごと嘘になる。それが無性に嫌だと思う位は、彼女の事を気に入っていた。答えを求められて麻衣は、視線をそのままに口を開く