第5章 〜怪盗キッド対策会議
「おいおい、マジかよ…! 本当なのか、安室くん?!」
「え、ええ….。まぁ、付き添いの男性は全く違いますが、女性の方は間違いないですね」
叫んだ直後から、血相を変えて勢いよく安室に掴みかかる小五郎。弟子の彼は、困った様子で肩を竦め乍ら応えていた。コナンの内心は複雑である。思い出すのさえ不愉快な記憶だ。まさか、悪人だと疑っていた因縁の相手が、警察の上層部と懇意に関わる国家に絡んだ善良者とは。
然し、尤もらしいこの理由を言えば自分もその場にいることができる。名目上は謝罪になるけど、事件に関われる絶好の機会を小さな探偵は逃したくない。例え、相手に嫌悪感や苛立ちを持っても、捜査に背中を向けない主義なのだ。そして燃え上がる本能のままにコナンは、野望を孕んだ目をギラつかせた。まるで捕食者のような瞳だったが、小五郎は気づくことなく「仕方ねぇな、ここにいろ」と言う。すると、警視総監の案内で挨拶をしに麻衣達一行がそばまで来た
「……先程申し上げた探偵が彼らです。右から、世間では名の知れた推理力を持つ毛利小五郎探偵と、その弟子である二人目に呼んだ安室透探偵です」
「初めまして。この度、お世話になる榊家の嫡子…現在当主の榊麻衣と言います。家業で神社の巫女をしていますが、何分特殊な家柄でして国の保護を受けつつ公務員としても活動してます。個人情報は守秘義務もありますが、身分の保証は政府がしますよ。後ろにいる者は護衛の伊達廣光。同じく我が家の関係者であり公務員をしてます。どうぞよろしくお願いします」
総監の紹介を聞いた麻衣も、自身と護衛の事を手短に語った。そうして前もって最低限明かすのは、過度な詮索を拒絶するためである。住む世界の差と詮索の無駄さを見せつけるのだ。戸惑った小五郎が「こちらこそ…」と畏る隣で、コナンと安室は麻衣に進み出た
「榊麻衣さん、というのですね。お久しぶりです、覚えてますか?」
「ポアロって名前の喫茶店だよ!僕達この前会ったよね?」
そう言って二人は無害そうに笑うと、また一歩麻衣に足を踏み出した。コナン達の登場に驚いた彼女が、目を見開いて困惑する
「ええ…勿論覚えてますが…。一体どうしてこんな所に喫茶店の店員と子供が?」
「兼業ですよ。バイトをしながら探偵としても働いてるんです」