第19章 〜大阪心霊現象ミステリー 初日編〜
それを控えめに制止したのは、麻衣の後方に控える男達だ。床に着くほど長い髪の美男が「お気持ちだけ頂きます」と言い、緑の髪が片目を覆ったミステリアスで怪しい男も同意を示す様に笑みを浮かべる。そうして二人の男達は、軽く椅子を引いて麻衣と安室に座るように促した
「さぁ、安室くんと主は席があるから座ってね」
「遠慮せずにどうぞ」
「えっ!ですが、貴方方は兎も角、僕は此処までの足役ですし…!僕が立っていますから、隣はお二人の方が良いのでは?!」
末席といえども神から親切すぎる気を遣われて、恐れ多さに両手と首を必死で左右に振って無理だと主張する動揺が激しい安室。普段の落ち着いた大人の余裕が微塵も無くなっており、上下関係のようなその言動に外野のコナン達も「え?」と両目を丸めていた。しかしずっと恐縮しきりの安室の肩に青江の両手が乗り、にっかり笑う彼によって安室はとうとう強制的に椅子へ座らされてしまう
「ああほら、緊張せずにリラックスして。僕らにその身をまかせてご覧よ。……普通に座ってという意味だよ?」
「……あ、はい。でしたら遠慮なく……」
青江の遠回しな言葉選びに何処となく厭らしさがある。わざと誤解を招く言い方をする彼に、安室は何とも言えず愛想笑いで厚意に甘える事にした。彼らの主人たる麻衣も、数珠丸に座りやすいよう椅子を引かれて席に着く。コナン達は全員揃ってこう思った
色んな意味で個性が凄いメンバーが来たんじゃないか、と───
*
麻衣は雅号のお涼と、安室と青江達は改めて名前を名乗り、茶を配られて夫婦から依頼について話を聞く事に。彼らは長方形のテーブルを囲い、縦長の面に毛利一行と麻衣達が対面して座り、夫婦二人の正面に服部と和葉が腰を据えていた。果たしてどんな話が来るものか、と緊張感が漂う中で夫・三船清次郎が口を開いた
「最初に違和感に気づいたんは、1ヶ月ほど前や。毎日同じ時間に非通知電話がかかるようになった。そんで家鳴りは酷くなるし、夜中に何かか這いずり回るし、同じ夢を全員見るようになった」
「それだけやない…。写真に変なもんも映るし、目の前で急に物が消えた思ったら、別のとこに移動したり壊れたりするようになって」
「「ひっ!!」」
蘭と和葉が同時に青ざめた顔で悲鳴を上げた