第17章 〜手を取り合う架け橋〜
「……それでは、刀剣男士というのは、一体どういった存在ですかな?貴女方が物の心を励起させて、一体何を呼び醒ましたのか」
「彼らは刀剣に眠る意思を具現化させた存在です。所謂【付喪神】と呼ばれる、神の末席に名を連ねたモノ達…。この国の歴史と人間が大事にしてきた、古からの宝物です。我が家はそれを本霊に近しい分霊として喚びましたーーー」
その後も、麻衣の語りは長らく続いた。審神者と刀剣男士を繋ぐ重要なシステムや、人間と付喪神が織りなす複雑な在り方と主従関係、榊家が一番最初に選ばれた経緯、時の権力者達と共有してきた霊能力の仕組みなど。彼らは逢魔が時になるまで、ずっと会議を続けていた
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逢魔が時ーーーそれは黄昏時とも云い、隂と陽が交わる時間。ヒトならざるモノが動きを見せる時であり、麻衣達にとって油断ならない変化の時
政府と公安側の会議は無事に終了した。彼らの協力関係も問題なく纏まるが、最低限の条件が出来ていた。それは相互の国家機密を明かし合ったが、その漏洩を遵守すると共に互いの組織の捜査を追求しない事。双方にとって望ましいこの条件は、すぐに可決された。全体的に文句のない結果へと落ち着いたのである
その後、会議を晴れやかな気持ちで終わらせた降谷達は、そのまま警視庁と警察庁に帰っていく。無論麻衣と一期は神社の門の前まで見送って行き、門を境に別れの挨拶を交わした
「それでは、本日は貴重な時間をありがとうござまいました」
「いいえ、とても充実した語らいとなりました。お気をつけてお帰りください」
公安側の代表として黒田が喋り、麻衣も何気ない言葉で返した。そして降谷達は麻衣と、彼女が管理している神社の名のある神、一護を始めとする数多の付喪神達に、深くて丁寧な一礼を送った。畏怖を込めて、敬意を持って、感謝を捧げ、祈りを抱えて。そうして、降谷達は万感な思いを呑んで背中を向けて去って行った。麻衣も頭を下げて送り出し、十数秒経って漸く顔を上げた。すると一期が、後ろから名前を呼んで畳まれた羽織を差し出す
「何とか無事に終わりましたな。お疲れ様でした主殿」
「ありがとうございます一期、本丸に戻りましょうか」
微笑みかける男神に、少女もそう言って微笑を返した