第11章 〜喫茶ポアロに、事件の残り香〜
「んん…っ!ホントですね、とても美味しいです!」
最初の一口を食べた瞬間、麻衣が驚いた顔であまりの美味さに声を弾ませた。そのまま控えめに感動している彼女は、しかし冷静な分析力も持ち合わせているらしい
「もしかして、この味付けは味噌とマヨネーズを使っています?」
「!!え、ええ…。まさか一口で言い当てられるとは思いませんでした…」
余程鋭いタイプなのか、あっさり味付けを見破られて呆然とする安室。答えに迷っている素振りも見せず、麻衣は質問というより確信を持った言い回しをしていた。驚きつつも彼が正解だと明かすと、年頃の様にはしゃぎはないが、ふんわりと嬉しそうに頬を緩める
「よかった、料理は結構得意なんです。主食よりもお菓子作りに寄ってますけどね」
「ああ。お嬢は週に二回、色んな菓子を作ってくれる」
「「へぇ〜」」
「因みに今までで一番やばかったデザートはパフェかな?麻衣嬢がビニールプールぐらいの容器用意してさ、仲間内で食べるために七十人分のでっかいパフェタワー作ったことがあって」
「「え゛……」」
「ものすごく美味しかったんだけど、作るのに色々大変だったから…。仕方なく特別な日以外、シュークリームとかクッキー、マカロンみたいな普通のデザート作ってくれるんだ」
麻衣は家でデザートをよく作っているらしい。蘭達はその女子力に感心しながら相槌を打っていたが、続く言葉にギョッと目を剥いた。何気ない日常の話なのだが、サラッと衝撃的な事を聞く
「「(七十人分のパフェタワーって何…?!)」」
見かける機会がほとんど、いや普通ならないから想像しようもない。分かるのは出来たものが規格外で恐ろしく甘そうなことと、それを何十人が囲って食べる光景が非常に難しいって事ぐらいだ。そもそも、どうして人数分を合わせて作ったのか。そして仲間内と言ったが、そんなに大人数で普通に生活出来るのか。思いがけず色々心配してしまう内容が浮上した。そして意外にもチャレンジ精神な一面に引き気味ながら、寧ろ呆れるよりも感心してしまう
「た、たしかにパフェタワーは作る過程で問題が山積みですよね。滅多に作る事は無さそうですけど…」
安室は無難にそう返しておいた。その後も全員が日常の話題を出し合い、賑やかで楽しい時間を謳歌したのだった───