第2章 ヘドロ編
「私もあんな風になりたいなぁ。」
最初はその思いがきっかけだった。液晶越しでヒーローたちの活躍を見て、バカ兄貴とはしゃぎながら言っていた。
私は個性の出現に期待していた、強くてかっこいいのがいいなぁ、と私は願った。
だが誘拐事件に遭った時、あまりの恐怖で私は個性が強制的に出現したらしい。
私の個性は「コピー」と言われた
首を切られた時、犯人の個性をとっさにコピーしていたと判明したから。
とても強い個性だと言われたが、あまり嬉しいものではなかった。
発動条件などの調査でまた「コピー」ではなく「拝借」だったと判明、私がDNA情報から個性を分析できると知って、みんな私にこう言った。
「素晴らしい個性だ、きっとすごいヒーローになれると。」
だけど私は知っている
私はヒーローになんてなれないんだと。
「神宮妹、まだ進路決まってないのか?お前の兄貴がお前と同じとこ行くって言ってるからよ、早く決めて欲しいのだが。」
「あ...,はい...」
「一応お前の兄貴雄英から推薦きてるから、お前もそこにしたらどうだ?」
「はい...、検討しときます。」
「明日までには決めろよ。」雄英ヒーロー科に行けばいいのに、めんどくさいなぁっと小さな声で先生が呟いた。
ヒーローを目指すのが当たり前かぁ。
目的もなく廊下を歩いてたらバカ兄貴に遭遇した
「まだ進路決まってないのか?」
「うん、なんかね。」
「俺は、お前が立派なヒーローになれると確信している、だからあまり考え込むな」
「うん、ありがとう。」でもねそうじゃないんだ
その言葉は欲しいわけじゃない。
「私先帰るわ。」
「おおう...、迎えちゃんと呼べよ。」
「1人になりたいから散歩がてら...」
「...、わかったちゃんと気をつけろよ、俺は先生と話があるから後で後ろ追うわ、ちゃんと帰り道に沿って帰るんだよ...」
「うん、わかった。」
私は知ってしまったんだよ、ヒーローになる重みを、ヒーローは人命を背中に背負って立たなければならない。
私にそんな勇気があるのだろうか。
脳裏に浮かび上がるのは、あの時窓に映る絶望に満ちた自分の幼い顔だった。
中途半端な覚悟でやりたくないんだ