第3章 衝撃
ああ、クオードは10年もの間、私を想い続けてくれていた。
何も…忘れてなんかいなかったんだ。
「なんだその顔は。…もしかして、俺といない間に他の男でもできたか?」
さっきまで余裕そうな表情だったのに、急に不安そうな顔になる。
その顔に、昔のクオードを思い出してしまう。
「できるわけないじゃん!…ってか!クオードはウルタ皇女とめちゃくちゃ良さそうな関係になってるんだから!嫉妬したんだからね!!!!」
あぁ、こんなに感情を露わにして。
好きな人の前で。
なんて恥ずかしい人間なのだろう。
言ったあと後悔して目を瞑っていた。
何も言わないクオードに、ああ、引かれたかな…なんて泣きそうになりながら恐る恐る目を開けて彼を見ると、
すごく拍子抜けしたような顔をしていた。
「まったく…俺を誰だと思ってるんだ。」
「え?ちょっと成長したマセガキ。」
「このやろっ…!」
「あははっ、ちょ、くすぐったいって!」
ああ、こんな幸せが続けばいい。
愛する人と出会えたんだ。
もし、エテーネルキューブが本当に完成して、彼が時渡りできたのなら。
……できたのなら?
私はそこの時代にはいない。
だって、5000年前のエテーネ王国民ではないのだから。
クオードと一緒にいることは絶対にできない。
夢を語って、嬉しそうなクオードにこの真実を打ち明けることは…私にはできない。
それにキュルルに再三言われてること。
『自分が時渡りしていることを他人に言うな。』
せめて、今の時間を…堪能させて。
「テレササマ!!!」
まぁ、そう上手く行くはずもなく。
「08号…。」
「電話がツナガッテマス。」
「うっ…マジか…。」
あの爺さん…ついに呼び出したか。
まぁ、08号通せばここで油売ってるのもバレてるだろうしね。
「行ってこいテレサ。俺もエテーネルキューブの様子を見に行かなければならない。」
「うん…分かった…。」
「そう名残惜しむな。また来てくれるな?」
「……うん!」
あのエテーネルキューブが完成したら…
クオードはエテーネの滅びを救える。
…大丈夫。
彼にはメレアーデがいる。
泣きそうになりながら私はクオードの部屋をあとにした。