• テキストサイズ

後悔の時渡り【ドラクエ10】

第5章 愛情


「クオードっ!!!」

私はクオードの元に駆け寄った。
彼は左胸を抑えて苦しそうにしていた。

「待って…いや……待ってよ……。」

クオードが死ぬ。
彼のおこないを見てみれば当たり前のことなのだ。
なのに、私は何故迷う?
こんなことならいっそ……

もうアストルティアのことだなんて知らない。

「ウルタ皇女!私を殺して!こんな結末なら私もいなくなった方……が…。」

自暴自棄になって彼女に泣き叫んでいると、ふわっと温かいものをかんじた。

ああ、クオード……。
こんな惨めな私でも愛してくれるのですか…?

「テレサ。ありがとう。」

自分が死にそうな状況だというのに。
彼は私を落ち着かせようと抱きしめてくれる。

「お前のおかげで、こんな血みどろな人生でも…希望を貰えたんだ。テレサは俺の光だ。」

光…そんなわけはない。
だって、彼を殺したのは私……。
エテーネ王国を救えなかった私が悪いんだ…。

そして彼が時渡りしてしまえば免れるかもしれない罪を…
自らの手で暴いてしまった。

「愛する人なのに……私は……。」

「テレサ。もし俺がエテーネルキューブで時渡りできたとして。……俺は自分の罪を忘れることは出来ない。ならばいっそ。」

“ここで死んで償ってしまいたい”

「お前のおかげだ。…相変わらずお前は正義感が強くて、人を救けられる。」

まさか、感謝されるとは思わなかった。
私はうなづくことしかできなかった。
クオードの肩で泣くことしか出来なかった。

「最後にひとつ。……もし姉さんに出会えた
ら伝えてくれ。俺は時渡りした先で元気にしていると。……あの姉さんのことだ。心配になってしまうだろう。」

そんな…メレアーデに……。
でも、それが最期の彼の願いなら……。

「じゃあな、テレサ……。」

抱きしめていた私を離してクオードは背中から防砂ダムに落ちようとする。

「クオードっ……!」

私は涙を流しながら、彼が落ちていくのを見ていた。

人は死ぬ前がいちばん綺麗な顔をするっていうでしょう?
本当にそれだった。

「クオード…、クオード…愛してる…ずっと…これからも……。」

かすれ声でほとんど聞こえなかったけれど。
彼は私に別れの言葉を伝え、落ちる寸前に言ったんだ。

「テレサ、愛している。」







fin
/ 22ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp