第6章 死者の声
俺の弟ルフィーに出会う少し前、もう一人の兄弟の存在だったサボと、海賊貯金をためるようになってからの話だ。
あの時、近くにデカい鳥がよく来るようになったのは気づいていたが、それが番で、卵を守ってたことを知ったのは雛の声が聞こえてからだった。
サボが近くまで行こうぜとか言うもんだから、気が進まないながらも、一緒に巣から離れた木によじ登ってみてみることに。
そこには3羽の丸っこい雛がチーチー鳴いててそれが、とんでもなくか弱く脆く映ったんだ。
大雨が続いたある日、風もひどく強くて木が大きくしなっていた。
親鳥が面倒を見ているだろう。
俺が気にしているわけでもない。
何となく気になってはいたものの、最初のうちはなんだかんだ言い訳を続けて見に行くことをしなかったんだ。
だけど、夜になってもっと強くなり出した風の音を聞いて心配になり、ダダンの家を抜け出して巣のあるあの木のところに行った。
たどり着いたそこで見たのは、枝が折れて巣が落ちて親鳥の姿はそこにない。
放っておけばいいのに、気になってしょうがなかった俺はあたりを探し回った。
だいたい落ちただろう辺りで、か細い声が聞こえてそこにつもった枝葉をかき分けると、小さい灰色の濡れた毛玉を見つける。
俺がここでコイツを持って帰らなければ、間違いなく死ぬ命。
そう思えば持って帰る以外の選択肢はなかった。
「お前が元気になるまでだからな…」
そう言い聞かせて持って帰ったんだ。
それから、元気になってもしばらく、俺とサボが一緒に居る時に街に出たりした。
人を乗せれるほど大きくはないはずだ。
でも、最後に見かけた時と同じ風貌。
間違いなく、あの日まで一緒に居たやつだ。
名前は適当に、飯をやればサクサク食べてしまうからサクって呼んだんだったっけか?
なんだか、懐かしい。
嬉しそうに首を上下して近寄るコイツが、しっかり俺の事を覚えてて、新しい飼い主と幸せそうにしてるんだと思うと胸が温かくなるのを感じた。