第6章 死者の声
「ところで、デュースはどこだ?」
「おそらく彼も食堂にいらしてると思いますよ」
「そうか。デュースのこともありがとよ」
広い船内は掃除が行き届いていて、すれ違う奴らは女の挨拶に目を輝かせて挨拶を返す。
案内された食堂につくと、中年のイカしたオッサンが愛想よく笑って女に挨拶した。
「患者さん目覚めたのかい?」
「来て早々、お騒がせしてしまったわね。」
「いえいえ。お久しぶりで…。毎日ご苦労様だね」
「ジョンさんこそ。あ、彼に何か作ってもらえないかしら」
「お安い御用で。やぁ、兄ちゃん、元気出たか?」
「あぁ、おかげさんで。」
オッサンはニコニコしたまま、空いてる席を促すが、その奥の方で、女二人に囲まれて、少々居心地悪そうに飯を食ってるデュースの姿を見かけた。
「オッサン。あそこでいいか?」
「もちろん。あ、ユリさん。食事は何をお出しすれば…?」
「あぁ…、本当は空っぽの胃にはおかゆとかがいいんですが、エースさんじゃ、満足なさらないでしょ?」
流石医者…なのか、観察眼があるというのが正しいのか、女が言うようにたしかに粥とかで満足する腹じゃない。
「あぁ。そうだな」
「あまり脂っこくないものでしたら、何でも構いませんよ?」
「それなら、柔らかく煮込んだ肉料理だったら満足してもらえるかな?それにリゾットも付けたら完璧だろう?」
この厨房から香る飯の匂いといい、オッサンから話されるメニューの話だけでよだれが出てきそうだ。
「あぁ。うまそうな匂いがするし、それで頼むよ」
「じゃぁ、決まりね。ジョンさん、お願いします」
「はい、ユリさん」
食うもんが決まれば、デュースが座っているテーブルへと向かう。
両サイドを固めている綺麗な姉ちゃんは、夜の街をうろついている奴らとは違って、ちゃんと作業が出来るような恰好をしてる。
この船に乗る、こいつらの会社の人間だろう。
俺たちが近づけば、彼女たちが先に気づいて、女に挨拶をし、スッと席を立って食堂から出ていった。