第5章 赤い腕章
翌年、ユリは予定通り晴れてディルバリーカンパニーの護衛隊長、総船医長として昇格を果たして更に活躍していた。
白衣には金の星のスタッズを横に並べた真っ赤な腕章に父さんがくれたパールの飾りの一部を縫いつけられている。
一段と慌ただしく世界中を飛び回るようになれば、その分の戦いを制してきた。
政府が注目する危険視する海賊団とも対峙しことごとく殲滅。
島を守ったこともあり、国王からの感謝状も承った。
海賊でも革命軍でもない大企業の護衛官であるユリ。
後ろ楯となっている赤髪海賊団、白髭海賊団の名前があるにも関わらず、行く島ごとに盛大な歓迎を受けられるほどの名実ともに"海の女神"だと称賛された。
もうひとつ。戦闘方法がなぜか解明されて"式紙使い"とも称され、白菊を知る人を中心にそう呼ぶものも多かった。
そんな彼女は今、海軍から召喚され向かっている最中である。
"七武海の勧誘"がきたのだ。
新世界側の海を急ぐスピードでもなく飛んでいると一隻の船に目が止まった。
「あれは!!ちょっと、咲、あの赤い船へ向かって。」
キィー
海軍本部まであと僅かという場所で前方に見えたのは九つの蛇が髑髏を中心に放射状に描かれた深紅のマスト。
九蛇海賊団の船である。
近づくと、こちらに気づいたのか無数の矢が飛んできた。
切り避けながら前進すると
「撃ち方止めぇい!!」
と凛とした声が届いた。
「そなたはユリか!?」
「ハンコック様!!」
船に降り立つとクルーがざわめき出す。
商船を狙う事が多いこの船では世間知らずと言われる女ヶ島の戦士でもディルバリー船を知らぬものはいないらしく、私の名を聞いて何者かと解ったらしい。
「控えよ!!妾が妹分じゃ。」
ハンコックの言葉に船員一同平伏し、度肝を抜かれた。
頭を上げさせたいが、郷に入れば郷に従えだ。
目の前にいるのが皇帝であり船長なのだから。
ユリがハンコックと互いに歩み寄り手を握り合い再会を喜んだ。