第1章 幼い士族が抱く使命ー序章ー
ある女の話に入る前に、拙者から話しておきたいことがある。
まずは拙者、死人でござる。
遠い死者の森より拙者の忘れ形見である子供達を見守っておるのじゃ。
拙者は生前、軍師として光月家に仕えておった。
名を紅條義久と申す。
当時の将軍光月スキヤキ様に願い出て、おでん様の軍師となった。
拙者の血縁は陰陽師の末裔であるがゆえ、我の血を引く子供たちも人が放つ"気""念""オーラ"を詠み解けるほど感じやすい。(因みに、陰陽術も護身用のものは受け継がれている。)
関わる者の過去や、腹の内を悟り、内、過去についてはその者の強烈に印象に残っている場面を映像で見ることができるのじゃ。
よって、信頼できる者を察知することに秀でておる。
他に、本人(我ら)が過去に関わったことのある"土地"や"人物"が関係してくる"大きな事件"や"戦争"については予知夢を見ることがある。
大抵それらは、能力の持ち主によるが事件の1~3年前に見ることが多い。
そういう類いは人の負の気や念が溜まりやすいからでござる。
して、今から15年前に起きた海賊と現在の将軍が起こした事件も、その1年と少し前に予知無を見た。
予知夢はどう足掻こうと現実化するもの。
我が主君もそれを存じており、まだ幼い我らが子達を逃がそうと提案した。
主君の子供らは、親が大名であるがゆえ顔が知られておりいなくなるのが不自然であると、
そして、それでも、この国を後に取り戻す力になってほしいと、誠に心苦しいことに主君の子より先に我が子をこの窮地から旅立たせるとの事。
主君の子より先に逃げるなどできぬと異議を申し奉れば、
おでん様は
「なに。ただ逃げろと言うことではない。
桃の助たちはトキが時空を越えて逃がす。
義久の子は、21年後今の姿で現れるであろう我が嫡男の支えとなってもらう手筈じゃ。
お主の子息達に言うべきであるが、
.....ワノ国を
.......愛しい九里を
........宜しく頼んだぞ...。」
そこまで仰せられ、誰が断れましょうか.....。
あの時は、涙をこらえながらただ、己が主君を前に地面がめり込むかと思うほど、頭が上がらなかった。