第81章 物狂い※
「君も単純な愛し合いには飽きただろう?」
・・・そんな訳ない。
寧ろ、単純で何がいけないのか。
「俺なら暇はさせないし、飽きさせない」
求めていない、私に必要なのは零だけだ。
「彼の女なのに、どうせ偶にの相手なんだろう?」
偶にで構わない。
私達はそれだけの関係では無いのだから。
・・・ということは、この男には言えないが。
「・・・ふ、あぁ・・・っ」
男が触れる場所全てが焼けるように熱い。
触れてほしい。
でも触れてほしくない。
声が出てしまう。
でも声は出したくない。
明確な快楽が欲しい。
でも目の前の男からのものは求めていない。
矛盾する気持ちは膨れ上がる一方で、同時に男の笑みは深くなるばかりだった。
「今までで八回が最高だった。君はどれだけ耐えられそうだ?」
そういえば、そんな回数を言っていた。
何の事か今の今まで分からなかったが、男が胸ポケットから取り出したものを目にして、ようやくそれが何なのか、嫌でも気付かされた。
「その女は結局中毒になってね。薬無しではヤれなくなって、今も毎日色んな男の捌け口になってる」
そう話す男の手には・・・所謂、大人の玩具。
卵形のそれと、リモコンのようなものを同時に視界に入れれば、そういうものだとはすぐに気付けた。
ただ、どういう物か知識としてはあっても、使った事なんて無い。
未知というものに、更に恐怖が増して。
「大丈夫だ。この薬は感じる度に、それ以外の事を考えられなくなるから」
何が大丈夫なのか。
そんなもので得られる快楽の何が良いのか。
・・・不可抗力とは言え、以前その薬で狂った私が言えたことではないけど。
「・・・っ!!」
「へえ・・・案外、普段から楽しんでるみたいだね」
突然、身に付けていた衣服は一気に破られ、赤い痕が無数に残る上半身はあっという間に下着と共に露わにされた。
外気が体に触れるだけでも感じてしまう。
ましてや、指が肌に触れれば、感じないはずが無くて。