第80章 言って※
「・・・っ・・・」
もう一頻り、体に赤い痕が残されて。
胸の膨らみにある赤く腫れ上がった蕾は、彼の冷たい手が触れるのを待ちわびていた。
さっきの微弱な快楽のおかげで、体はとっくに限界を超えていて。
「零・・・っ」
「直ぐに触れてしまっては勿体ないだろ」
何が、なんて言えなかった。
でも、相変わらず私の言いたいことは分かっているようで。
減るものでは無い。
そこに勿体なさなんて、自分では感じられなくて。
「も・・・だめ、限界・・・」
両手の自由が無い今、自分から行動を起こすには限度がある。
自ら彼に触れることはできない。
けど、彼には触れてほしい。
その手でもっと私を、乱してほしい。
欲望を満たそうと脳も体も必死だった。
「どこでそんな強請り方覚えてくるんだ」
「零が言わせてるの・・・っ」
直接的に彼が言わせている訳ではないが、状況は限りなくそうだ。
これだけ焦らされれば、強請りたくもなる。
「それは光栄だな」
言っては再び指先だけで体を触られて。
体を捩らせる度に、手錠に繋がる鎖が音を立てるのが、どうにも背徳感を感じる。
彼の言っていた覚悟というのは、こういう事も含まれるのだろうか。
「・・・キスも、だめ・・・?」
欲しいところへ触れてくれないのなら、せめて。
貴方だけを見るという約束は果たすから。
そう訴えかけるように、強請った。
「・・・ひなた」
彼の手が私の顎を優しく、小さく持ち上げて。
顔をグッと近付けられると、零の鋭い目付きが私の目を捕らえて。
「覚悟はできているんだろうな?」
再びそう問われた。
しているつもりではある。
その覚悟というものが、私の認識違いでなければ。
軽く唇を噛みながら小さく頷くと、噛み付かれるようにキスをされて。
この苦しさが快楽を生み出す。
そう感じるのは、おかしくなっているからなのか。