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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第80章 言って※




「・・・つけて」

こういう機会は、そう無いだろうし。
それに、こうでもしないと彼の命令にも従えないとも思って。

・・・零だけを見ていたいのは確かなのに。

「現役の公安警察に手錠を掛けられるなんて、本物で無いとしても怖くないのか?」
「零だから怖くないよ・・・」

言われてみれば、確かにそうだ。
でも言葉通り、そこに恐怖というものは無い。

寧ろ貴重な経験かもしれない。
そう思えば、少しは乗り気になれた。

「・・・無理をしていないか」

彼の問いには小さく首を振って。

「してない・・・。けど・・・」
「・・・けど・・・?」

頬に触れたままの彼の手を握っては、そのまま向かい合う零の胸に顔を埋めた。

これだけでも十分おかしくなりそうなくらい、心臓が高鳴っている。

初めて触れ合うような感覚に陥るくらいに、気持ちの制御ができなくて。

心臓が、はち切れそうなくらいに脈打って。
呼吸が、困難になるほど苦しくて。

それでも、触れていたい、触れて欲しいという欲望だけは溢れてくる。

それなのに。

「零に触られたり見られたりすると・・・今日はいつも以上に緊張しておかしくなる・・・」

こういう行為が久しぶりだから、というのもあるだろうが、それだけでは無いはずで。

でも何故なのかは分からない。
分かっていれば、今頃こんな事にはなっていない。

「だから零に見られたり、目が合うのが恥ずかしい・・・」

言ってもどうしようもないことかもしれないが、こればかりは伝えておかなければならないと思って。

それは先程互いに、なるべく口にすることを決めたせいか、どこか使命感に似たものからで。

心拍数は上がったまま目を固く閉じていると、突然体は再びベッドへと押し付けられていた。

「そんな事、考えてる暇も無くさせるさ」

そう言う彼に笑顔は無くて。

きっと、余裕が無いとはこういう表情だ。

そう思う頃には、無機質な冷たい感覚を手首に覚えていて。


「覚悟は良いな?」


言葉と共に、カシャン、という装着音が静かに響いた。




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