第80章 言って※
「ンぅ、ん・・・っふ・・・ッ」
ここ一ヶ月、行為こそ無かったものの、キスは何度かしてきた。
けれど、こんなに荒々しいキスは久しぶりで。
だからだろうか。
もっと・・・と、貪欲になる。
「っは・・・ぁ、零・・・」
互いの唇が糸で繋がって。
それが切れる頃に、もう一度唇を重ねた。
何度も、何度も、何度も。
苦しくて、肺に空気を十分に送り込めなくても。
そんな事はお構い無しに、舌を絡め合った。
互いの何かを、埋め合うように。
「・・・シャワー、浴びるか?」
唇は触れ合う距離で、キスの合間にそう問われて。
そういえば、彼はもう浴びてしまったのか。
このまま眠ってしまっても良いけれど・・・それでも、入ってスッキリしたい気持ちが勝っているから。
「・・・行ってくる」
頷きながら答えると、もう一度舌が絡み合って。
結局お風呂場に辿り着いたのは、それから十数分経ってからの事だった。
ーーー
「・・・・・・」
脱衣場で服を脱ぐと、お風呂場へと足を踏み入れて。
普通のホテルとは一風違うような、豪華な内装に目を奪われた。
それと同時に目に入ったのは、風呂場には少し大き過ぎるくらいの鏡に移った、自分の姿で。
肩と足に残る銃創の痕。
観覧車の事故でついた細かな傷や痣。
とてもじゃないが、綺麗な体とは言えない。
そんな私が、本当に彼の傍に居て良いのだろうかと、要らぬ考えをしてしまう程。
結局、離れられないのは自分の方なのに。
こんな事、彼に言ったら怒るだろうな。
分かってはいるけど、チラついてしまうものは仕方がないと開き直っては、お湯の溜まっている湯船へとゆっくり体を沈めた。
体を温めた後、全身を洗い、適当に髪を乾かすと部屋へと戻って。
零は車に乗せていた簡単な着替えで済ませたようだったが、私は用意が無かった為、部屋にあったバスローブで身を包んだ。
勿論、下着なんてものは無くて。