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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第79章 覚悟は




「良いのかい?」
「ええ、勿論」

チェスでは先行の白が有利だと聞いている。
それは情報屋の言葉でも察することができた。

けれど彼は敢えて、後攻の黒を選んだ。

その理由も全く分からないが、彼の崩れない自信に溢れた笑みを見る限り・・・負ける気が無いことだけは十分に分かった。

「知っていますか?白に少しでも黒が入ると、真っ白には戻れないんですよ」

透さんのその言葉を合図にするように、静かにゲームは始められた。

私はただ、動かされていく駒を見守ることしかできない。

この広い部屋に、チェスの駒が動かされる音だけが響くのはどこか不思議な感覚にも陥って。

向かい合う二人の顔には笑顔が貼り付けられているが、それぞれどことなく違う雰囲気の笑顔に、恐怖に似た感情を覚えた。

「それなら、大量の白で塗り潰せば良いのさ」

その言葉を実行するように、情報屋は自身の動かす白の駒で、透さんの黒の駒を取った。

今、勝負がどうなっているのか、私には分からない。
分かったところで、どうすることもできないけれど。

時々彼らの表情を確認しては、盤の上の駒を黙って見つめた。

ーーー

あれから二時間近く、勝負は続いた。
それでもまだまだ終わりを見せる事はなく、ただ会話も無いまま進められて。

「・・・・・・」

時間と共に緊張と恐怖の糸が切れはしないものの、ゆっくりと緩み始め、そのせいか急に眠気に襲われた。

「・・・ひなたさん?」
「す、すみませ・・・」

一瞬、気を失うように眠ってしまったようで。
寄りかかった彼の集中を途切れさせてしまった。

「ベッドを貸そうか、子猫ちゃん?」
「すぐに勝負をつけますので、お構いなく」

彼に肩を抱かれ引き寄せられると、途端に安心感に包まれて。

緩んでいた糸は簡単に切れた。

「透さ・・・」

眠ってはいけない。

何度も脳内で言い聞かせたのに。

体は全く言うことを聞かず。

「おやすみ」

彼のキスが額に落とされて。

そのまま重い瞼はゆっくり閉じられた。




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