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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第79章 覚悟は




「大丈夫ですよ」

彼は小声で、袖を握る私の手に手を重ねながら、そう言ってくれた。

そうだ、彼がいるから大丈夫だ。

何故ここに連れてこられたのかは分からないが、この先に行けば分かるだろうと、腹を括っては彼と一緒に通路を突き進んだ。

その先には、また一つの扉があって。

一見普通のドア。
けれど、それを普通では無いものにするのが、その横の壁に取り付けられた禍々しいパネルだった。

そのパネルに映し出されている0~9までの数字の中から、彼は何の迷いも無く順に数桁打ち込んで。

数秒後、ロック解除の文字がパネルに表示されたかと思うと、ガチャンッ、と突然大きな音が通路内に響いた。

彼の袖は離せないまま。
不安も消えないまま。

彼はそのドアを開け、ゆっくり室内へと入っていった。

「待ちくたびれたよ」

そこには、今まで通ってきた場所の先にあるとは思えない、豪華なホテルのような一室が広がっていて。

そのだだっ広い部屋の中央にポツリと置かれたソファーと机。

そこには、スーツ姿の金髪の男が一人座っていた。

歳は、零と変わらないくらいだろうか。

ハーフのような綺麗な顔立ちに、鋭い目付き。
ただ、笑顔なのに何故か笑っているようには見えず。

スラッとした長い足を組み、曲げた指を頬につけて肘をつきながらこちらを見据える目は、これだけの距離があっても恐怖を覚えた。

・・・彼の言った、覚悟と臆しない心の準備という意味が、その時やっと分かった気がした。

「すみません、何せ入り組んだ面倒な場所にあるものですから」

どうやら彼らは見知った関係のようで。

ゆっくり男へと近付く彼に不安を伝えるように、袖を握る力をそっと強めた。

「その子が、噂の子猫ちゃんかい?」
「ええ。ただ少し臆病ですので、あまり怖がらせないで頂けますか?」

彼がそう言うと、男は何故か大口を開けて高笑いをしてみせた。

突然のそれに驚いて肩を震わせてしまうが、バーボンは冷静に足を進め、男の向かいにあるソファーへと私を誘導しながら腰を下ろした。




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