第79章 覚悟は
「大丈夫です!あ、安室さんにも聞いておいてもらっていいですか?」
「分かりました」
恐らく、零も来ないだろうな。
本当は・・・珍しくそういうものに、顔を出してみたいと思い始めていて。
今まで極力避けてきたのに。
零に会って、私は変わってしまった。
今となっては、良くも悪くも。
この一ヶ月は・・・その影響が特に強かった。
ーーー
その日の夜、ポアロでの仕事が終わると事務所で零の帰りを待った。
だいぶ慣れてはきたが、未だにバーボンとして会うのは緊張する。
あれから、バーボンとして体を重ね合わせたことはない。
バーボンどころか、安室透とも、降谷零とも・・・ジンに足を撃たれてからは、キス程度はあっても、そういうことは無かった。
別にそういう事がしたい訳では無いが、段々と不安も感じてきてしまって。
私に興味が無くなってしまったのではないか、と。
「・・・・・・」
不安を募らせながらも、軽いドレスコードという指示があった為、控えめなドレスを選んで身に付けた。
バーボンと会う時は、なるべくスカートでいることを命じられていた。
普段からスカートはよく履いていたが、それもなるべく短い方が良いと言われていて。
足の傷が見えてしまう為、バーボンと会う時はそれが隠れるギリギリの物を身に付けた。
バーボンの女だから・・・それは納得できないことではなかったけれど。
ただ、ドレスコードという指示は今回が初めてのことだった。
「!」
気配も何も無く、突然事務所のドアが開けられて。
そこから顔を覗かせたのは。
「お待たせして申し訳ありません」
「・・・いえ、大丈夫です」
降谷零ではなく、バーボンだった。
こうしてバーボンと会うと分かっていたり予想できる時は良いのだが、たまに何の連絡も無くバーボンで帰ってくることもあった。
その時は決まってどこかへ連れて行かれ、その先で停められた車の中で待機していることが多くて。
そして、帰ってくる頃にはいつもの零になっていて。
何をしているのか分からなかったが、それが私の役目なら、そうするまでだった。