第78章 監視下
「いずれにせよ、僕があの場に行けばひなたの命が危なかった。だから敢えて行かなかった事は・・・本当に申し訳無い」
・・・そうか。
為す術が無かった訳じゃなく、敢えてそうしたんだ。
確かに昨日のジンの言動からして、あの場にバーボンが来れば、言っていた事を実行していたかもしれない。
「まだジンがひなたを殺さないという確信はあったが・・・それでも、気が気じゃ無かった」
その確信がどういう理由からか分からないが、その理由は今回に限ったことかもしれない。
それ故、その理由を聞くことは避けることにして。
それに、ベルモットとの間に約束があるとは言えど、それがどこまで忠実に守られるか、分かったものでは無い。
あくまでも彼女は組織側の人間だ。
裏切りはいつ起きてもおかしくない。
「・・・怪我のことはどうして?」
そこまではお互いに分かったとして、言っていない怪我のことまでどうして分かったのか。
「さすがにそこまで出血があれば、匂いで分かる。それに、歩く時少しぎこちなかったからな」
・・・やはり、気付かれないように過ごすのは不可能だったか。
でも・・・。
「銃創って・・・よく気付いたね」
「ジンと会った際の怪我なら、銃創以外有り得ないからな」
あの男が手を汚す時は必ず、銃を使って始末する・・・ということか。
納得はしたくないが、彼が怪我のことを知った理由はこれで分かった。
「救急箱の場所、探していただろう?」
「・・・見てたの?」
あの場を見られていたとなると、相当恥ずかしいところではある。
「ああ。だからそれを自分から取り出せば、その時話すと思ったんだがな」
・・・ズルい。
つまり、あの時グラスを割って怪我をしたのはわざと、ということで。
「いつでも良いって言ったのに・・・」
「伝えるべきだと思った時に、とは言ったが、それを言わせる努力をしないとは言っていないだろう」
やっぱり・・・ズルい。
結局彼は最初から・・・。
今日明日には言わせるつもりだったんじゃないか。