第78章 監視下
どうしてここに零がいるのか。
どうして怪我をしていると分かったのか。
どうしてそれが銃創だと知っているのか。
どうして何も・・・聞かないのか。
色んな疑問が生まれたが、最後の疑問は自分が言わないからだと咄嗟に気付いた。
「僕はついていけないが、風見に連絡を入れておく。終わったらここで安静に・・・」
「零・・・っ」
言わなきゃ。
いつでも良いと彼は言ったけれど。
彼だって早く言ってほしいはずだ。
「昨日の・・・ことなんだけど・・・」
彼はもう、全てを知っている。
そうとは限らないが、限りなくその可能性は高い。
それに、そうだと思えば少しは緊張が軽くなった。
「・・・・・・」
それでも、わざわざ彼が心配するようなことを言うのが嫌で、怖くて。
こういう決心は相変わらず弱くて、駄目な人間だと痛感してしまう。
「・・・ジンだろう」
「!」
口篭る私に痺れを切らしたのか、彼の方から話を切り出した。
「ベルモットに聞いたの・・・?」
「いや、聞いていない」
彼といい、沖矢さんといい。
じゃあ、どうして知っているのか。
「ジンが動き出していたのは知っていた。それに、昨日の午前、ベルモットが事務所に来ただろう」
「知ってたの?」
正確には化けの皮を被ったベルモットだけれど。
でも、ベルモットから聞いていないのであれば、尚更疑問は深まる。
「事務所の監視カメラで確認はしていた。カメラの無いところで脅されて、ついて行ったんだろう」
・・・ライブ映像で確認していたんだ。
それでも彼は、為す術が無かった・・・ということか。
「公安の人間を張り付かせることも、追跡させることもできないからな。ひなたには怖い思いをさせて、すまなかった」
目を伏せる彼に、ただ首を横に振ることしかできなくて。
兄が関わっていた、そして彼が公安の警察官である以上、そういう危険は承知しているつもりで。